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2025/10/06 01:37

マスターピースは、Kaijiendoの思想がたどり着いた“構造美の極点”である。
クロコダイルとホースバット。
二つの革が持つ象徴を、一つの形に封じ込めたシリーズだ。

腹──財を掴み、富を育む部位

クロコダイルの中でも“腹”は、最上の部位とされてきた。
竹腑の整った秩序と、柔らかさ・耐久性を兼ね備える構造。
古くからその形状は「財を掴み、富を育む象徴」とされ、力と安定、そして繁栄を司る存在として尊ばれてきた。
Kaijiendoでは、その腹部のみを厳選し、裁断の角度とカットラインによって、左右対称の美と深い艶を最大限に引き出している。
それは単なる素材の選択ではなく、中心から構築するという思想の選択でもある。
“腹”を使うことは、ブランドの中心を示すことにほかならない。

馬──幸運を運ぶ存在

ホースバットは、馬の臀部(バット)を植物タンニンで鞣し、
コードバン層を内包する緻密な繊維構造を持つ。
その密度は、時を重ねるほどに艶を生み、まるで使う人の運命を写すように変化していく。
古代より馬は「幸運を運ぶ生き物」とされてきた。
ギリシャ神話ではポセイドンの使いとして豊穣を、アジアでは天と地をつなぐ霊獣として勝利と繁栄を象徴する。
「人と神のあいだを駆ける存在」それが、馬が“運を運ぶ”と信じられてきた理由である。
Kaijiendoがホースバットを内装に選ぶのは、単なる素材の美しさではない。
クロコダイルが掴んだ“財”を、馬が“運ぶ”という、二つの力をひとつの構造に宿すためである。

掴む力と、運ぶ力の融合

マスターピースは、「掴む力(クロコダイル)」と「運ぶ力(ホース)」の均衡によって成立している。
それは、力と祈り、強さと静けさ、二つの相反する要素が一点で交わる構造美の結晶だ。
均整の取れた腑模様と、沈み込むような黒の艶。
ホースバットが内側から支えるその姿は、まるで“運命の器”のように、持つ人の生を映し出す。
マスターピースを手にするということは、単に高価な革を所有することではない。
自らの歩む力と、導かれる力を信じるという選択である。

クロコダイルは掴む。ホースは運ぶ。
この二つの力が重なったとき、財布は道具ではなく、祈りの構造へと昇華する。
それは、Kaijiendoが築き上げた“最高傑作”という名の象徴であり、時を超えて、持つ人の人生そのものを映す器となる。

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