JOURNAL

2025/11/14 21:27

運がまだ形になる前、ただ手の中で革と時間を確かめていた頃がある。
RoadTrip(ロードトリップ)は、Kaijiendoの最初の呼吸であり、運の構造が生まれる以前の原型そのものである。
それは、素材の誠実さと人の意思だけで動き出す、未完成の旅である。

出発 ─ まだ掴む前の呼吸

IGNISが運の始まりを告げるとするなら、RoadTripはその手前にある出発の意志である。
何かを掴む前に、まず動き出す。
革を選び、縫い、使うという原初的な行為の中に、すべての循環の源泉が潜んでいる。
RoadTripとは、行動する前の静かな決意をかたちにした構造である。

素材 ─ 誠実という原点

使用されるのは、馬革と牛革。
いずれも希少ではない。
しかし、そのどちらも誠実という一点で他に代えがたい力を持つ。
馬革は、完璧ではないが真実の痕跡を宿し、牛革は、過剰な油分と野性的な香りで、革という素材の生をそのまま伝える。
整いすぎない、飾らない。
そこにこそ、すべての旅が始まる現実の美がある。

時間 ─ 未完成の美学

RoadTripは、完成を売るための構造ではない。
むしろ、時間と共に完成していくための器である。
手の跡、摩耗、色の変化。
それらの痕跡こそが、この作品を完成へ導く共作者である。
革を育てるという行為そのものが、日々を確かめる手段であり、変化を受け入れるための旅路である。
贅沢とは、何を得るかではなく、どのように時間を重ねるか。
RoadTripは、その問いへの最初の答えとなる。

RoadTripという選択

RoadTripを所有するということは、運を掴むよりも前に、自らの足で歩み出すという選択である。
素材の声を聴き、日常の中で少しずつ革を育てていく。
その過程こそが、Kaijiendoの物語が始まる場所。
すべての流れが巡る前の静かな鼓動。
それが、この未完成の旅の意味である。








JOURNAL Top