JOURNAL

2025/06/05 02:58

革製品における「価値」は、しばしば視覚的な豪奢さによって測られます。
目に見える装飾、目立つ素材、主張するディテール。
それらを“高級”とみなす感覚が、私たちの消費の多くを支配しています。
しかし、表面に現れぬものにこそ、本質が宿るのではないか。
そんな問いからこのシリーズを始めました。

贅沢とは、他者に見せるものか

クロコダイル、コードバン、リザード――
最上級とされるそれらの素材を、「内側」に使うという選択。
BLACK INSIDEシリーズでは、あえてその高級素材を“表”には使いません。
見えない場所にこそ、最高を――
それは、他者の目に映らぬ領域で、自らの美意識と対話する構造です。
この構成には、「秘する」という思想が込められています。

「BLACK」という沈黙

BLACK INSIDEに使われるのは、黒く染められたクロコダイル。
表には一切見えないまま、内側にだけひっそりと潜むその存在は、
まるで沈黙のように、語らずして深みを伝えます。
それは、語られないことで洗練されてゆく美。
言葉ではなく、所作や使用の痕跡によってのみ、
持ち主とともに成熟していくのです。

自分だけが知っている“裏側”

BLACK INSIDEを手にしたとき、誰もその贅沢には気づかないかもしれません。
しかし、日々手にするたび、ふとした瞬間に目に入るその黒い内装は、
使い手だけに許された“密やかな悦び”となるはずです。
それは、外見がすべてではないという感性。
誰にも見せないからこそ、そこに意味を与えるという選択。
BLACK INSIDEとは、見せるための贅沢ではなく、「持つという美学」そのものです。

外には語らず、内に宿す思想

BLACK INSIDEは、量産品や流行には決して寄り添いません。
それは、自分の内面とだけ響き合う、沈黙の贅沢だからです。
表には何も語らず、
それでも手にした人の中にだけ残る“思想のかたち”。
この構造に宿る美学が、貴方の内面にそっと触れることを願って。


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