2025/05/15 15:10

商品ページでは語りきれなかった、このウォレットの内側にある思想と設計について。
手にする前には伝わらず、使い始めてから気づく「違い」を、ここに記します。
素材に宿る野性

このウォレットに使われている革は、イタリア・マリアム社が手がけるホースバット。
馬の臀部にあたる部位を、伝統的なバケッタ製法で鞣したものです。
繊維密度が高く、オイルが深くまで浸透しているため、手に取った瞬間に独特の“重み”と“湿度”を感じさせます。
馬革は牛革よりも傷が多く、素上げでは個体差が顕著です。
だからこそ、それを「個性」として認める人にこそ、この素材はふさわしいと考えています。
100% ホースバット|贅沢ではなく必然

この製品の内装にも、外装と同じくホースバットを使用しています。
単なる贅沢ではありません。
表裏で革の質感が一致することで、使ったときの“まとまり”がまるで違ってきます。
一枚の革のように、全体で一つの手触りになる。そのためにホースバットを100%使うことはは必然でした。
ディテールに込めた意図

フラップ式のコインケースには、あえてファスナーを使っていません。理由は3つ。
ひとつめは左右どっちの手でも同じ使い方が出来る様に。
ふたつめは革の厚みと干渉を避けるため。
さいごに経年変化で金属と革の摩擦が生む“当たり”を最小限にするためです。
正面にカード段を設けなかったのも、同様の意図です。
閉じたときの自然な収まりと、開いたときの使用感。
それらを両立するために、設計はギリギリまで削ぎ落とされています。
経年変化に現れる真価

表面の黒が擦れ、茶芯が浮き上がってくる。
艶が増し、手に吸い付くような質感になっていく。
その変化は偶然ではなく、バケッタ製法と素上げによって意図されたものです。
使うほどに馴染み、深まり、革と使い手の関係が育っていく。
このウォレットは、購入した時点では「完成」していません。
使い続けることでようやく完成に向かっていく「道具」であり、「素材との対話」でもあります。
まとめにかえて

大量生産では避けられる要素──色ムラ、傷、トラ模様。
それらを含んでなお、あるいはそれゆえに美しいと感じられる方へ。
このウォレットは、そういった“眼差し”を持つ方のための製品です。